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自賠責保険に関する裁判例
【裁判例】 泥棒運転と自動車所有者の責任 最高裁判所 昭和48年12月20日
裁判所が認定した事実は次のとおりですが、このような事実関係を前提として、裁判所は自動車所有者であるタクシー会社は「運行供用者」には当たらないとしました。理由として、本件自動車の運行は、訴外Aが支配していたものであり、タクシー会社はなんらその運行を指示制御すべき立場になく、また、その運行利益もタクシー会社に帰属していたといえないことが明らかであるとしています。 1 タクシー会社は、肩書住所地において、44台の営業車と90余名の従業員を使用してタクシー業を営む会社である。 2 本件自動車もタクシー会社の所有に属していたものであるが、昭和42年8月22日本件自動車は、その当番乗務員が無断欠勤したのに、朝からドアに鍵をかけず、エンジンキーを差し込んだまま、原判示のような状況にあるタクシー会社の車庫の第一審判決別紙見取図表示の地点に駐車されていた。 3 訴外Aは、タクシー会社とは雇傭関係等の人的関係をなんら有しないにもかかわらず、タクシー会社の車を窃取してタクシー営業をし、そのうえで乗り捨てようと企て、同日午後11時頃扉が開いていた車庫の裏門から侵入したうえ本件自動車に乗り込んで盗み出し、大阪市内においてタクシー営業を営むうち、翌23日午前1時5分頃大阪市港区内を進行中、市電安全地帯に本件自動車を接触させ、 その衝撃によつて客として同乗していた被害者に傷害を負わせた。 また本件では被害者は、自賠法の責任のほか、民法715条の使用者責任も追及していますが、この点についても最高裁は次のように述べてタクシー会社の責任を否定しました。 「自動車の所有者が駐車場に自動車を駐車させる場合、右駐車場が、客観的に第三者の自由な立入を禁止する構造、管理状況にあると認めうるときには、たとえ当該自動車にエンジンキーを差し込んだままの状態で駐車させても、このことのために、通常、右自動車が第三者によつて窃取され、かつ、この第三者よつて交通事故が惹起されるものとはいえないから、自動車にエンジンキーを差し込んだまま駐車させたことと当該自動車を窃取した第三者が惹起した交通事故による損害との間には、相当因果関係があると認めることはできない。」 【掲載誌】 最高裁判所民事判例集27巻11号1611頁 最高裁判所裁判集民事110号787頁 裁判所時報634号1頁 判例時報737号40頁
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