共有に関するQA

【裁判例】 いわゆる全面的価格賠償の方法により共有物を分割することの許される特段の事情の存否について審理判断することなく競売による分割をすべきものとした原審の判断に違法があるとされた事例 最高裁判所平成8年10月31日
1 事案の概要  本件で問題となった不動産は,病院の建物及びその敷地として使用されているもので,病院は救急病院として地域社会にも貢献していました。 本件不動産は相続の発生により共有状態となりましたが,先代の時代から一体として病院の運営に供されており,相続人の一部が病院経営を引き継いで行なっていました。 相続人の1人から本件不動産の持分を買い受けた靴類の製造販売等を目的とする会社が共有者となってしまい,同社が競売による分割を求めて本件共有物分割の訴えを提起,一審二審は、いずれも競売による価格分割を命じたため,病院を経営していた相続人らが上告しました。 2 最高裁の判断 (1)全面的価格賠償による共有物分割の可否(積極) 民法258条二2は共有物分割の方法として現物分割を原則としつつも,共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによって著しく価格を損じるおそれがあるときは、競売による分割をすることができる旨を規定している。ところで、この裁判所による共有物の分割は、民事訴訟上の訴えの手続により審理判断するものとされているが、その本質は非訟事件であって、法は、裁判所の適切な裁量権の行使により共有者間の公平を保ちつつ、当該共有物の性質や共有状態の実状に合った妥当な分割が実現されることを期したものと考えられる。 したがってこの規定はすべての場合にその分割方法を現物分割又は競売による分割のみに限定し,他の分割方法を一切否定した趣旨のものとは解されない。 共有物分割の申立てを受けた裁判所としては,現物分割をするに当たって,持分の価格以上の現物を取得する共有者に当該超過分の対価を支払わせ,過不足の調整をすることができる(最高裁昭和五九年(オ)第八〇五号同六二年四月二二日大法廷判決・民集四一巻三号四〇八頁参照)のみならず、当該共有物の性質及び形状、共有関係の発生原因、共有者の数及び持分の割合、共有物の利用状況及び分割された場合の経済的価値、分割方法についての共有者の希望及びその合理性の有無等の事情を総合的に考慮し、当該共有物を共有者のうちの特定の者に取得させるのが相当であると認められ、かつ、その価格が適正に評価され、当該共有物を取得する者に支払能力があって、他の共有者にはその持分の価格を取得させることとしても共有者間の実質的公平を害しないと認められる特段の事情が存するときは,共有物を共有者のうちの一人の単独所有又は数人の共有とし,これらの者から他の共有者に対して持分の価格を賠償させる方法,すなわち全面的価格賠償の方法による分割をすることも許されるものというべきである。 (2)本件における判断 本件不動産は病院その附属施設及びこれらの敷地として一体的に病院の運営に供されているのであるから,これらを切り離して現物分割をすれば病院運営が困難になるものと予想される。 そして,共有者となった会社が競売による分割を希望しているのに対し,病院を経営している相続人らは本件不動産を競売に付することなく,自らがこれを取得する全面的価格賠償の方法による分割を希望している。 本件不動産が従来から一体として病院の運営に供されており,同病院が救急病院として地域社会に貢献していること,相続人らが本件不動産の持分を取得した経緯,その持分の割合等の事情を考慮すると,本件不動産を相続人らの取得とすることが相当でないとはいえないし,相続人らの支払能力のいかんによっては本件不動産の適正な評価額に従って会社にその持分の価格を取得させることとしても、共有者間の実質的公平を害しないものと考えられる。 そうすると,本件について,全面的価格賠償の方法により共有物を分割することの許される特段の事情の存否について審理判断することなく,競売による分割をすべきものとした原判決には、民法258条の解釈適用の誤り,ひいては審理不尽,理由不備の違法があるというべきである。 そして,本件不動産の分割については,右の全面的価格賠償の方法によることの許される特段の事情の存否のほか,現物分割と価格賠償とを併用することの当否(前記のとおり、本件不動産は一体として病院の運営に供されているが、記録によれば、上告人らは、本件訴訟の過程において,土地建物の一部を会社に取得させる内容の現物分割を提案していたことも認められるから,本件不動産の一部は必ずしも病院の運営に不可欠ではないことがうかがわれる。 そうすると、本件については、具体的な事情のいかんによっては、本件不動産中,右の各不動産を会社の取得とし,その余を相続人らの取得とした上,価格賠償の方法によって過不足の調整をする分割方法を採ることも考えられないではなくはない)等について,更に審理を尽くさせる必要があるから,本件を原審に差し戻すこととする。 【掲載誌】  最高裁判所裁判集民事180号661頁        判例タイムズ931号142頁        判例時報1592号59頁
【法律相談QA】
法律相談の時間の目安はどのくらいですか? メールで相談することはできますか? 法律相談の料金はいくらですか? 費用が幾らくらいかかるのか不安です


タイトル
メールアドレス
お名前 (全角)
お問い合わせ内容
個人情報規約 個人情報規約はこちら
(注)このフォームは簡易お問い合せフォームです。一般的,簡単なご相談であればメールでご回答差し上げます(無料)。 「相談フォーム」もご利用ください。