有責配偶者からの離婚請求 QA

【裁判例】 有責配偶者からの離婚請求を棄却した事例 最高裁判所 平成16年11月18日
【本件の概要】 1 夫は税務署員で,税務署署でアルバイトとして働いていた妻と知り合い,平成6年11月に妻と結婚式を挙げました(婚姻の届出は同年12月)。 2 夫は,婚姻をした当初は,妻がきれい好きな人であるとして好感を持っていたのですが,次第に,妻との生活に不快感を覚えるようになります。判決では次のようなエピソードが指摘されています。  ・帰宅すると,玄関で靴下を脱いで室内用靴下に履き替え,玄関のすぐ横の夫の部屋で,室内用の服に着替えをして,敷いた新聞紙の上にかばんを置くものとされたこと  ・衣類は一度洗濯してから着るものとされ,夫が子供と公園の砂場等で遊んで帰ってきたときには,居間等に入る前に必ず風呂場でシャワーを浴びるものとされたこと  ・居間等で寝転ぶときは,頭の油で汚れることを理由に,頭の下に広告の紙を敷くものとされたこと 3 その後,夫は,職場の研修生の女性と関係を持ち,妻に対しては,「好きな人がいる,その人が大事だ」,「2馬力で楽しい人生が送れる」,「女の人を待たせている」などと言って,離婚を申し入れます。その際,夫は,妻からその女性との 関係を問いただされ,その女性と「ホテルにもよく行く」などと性関係を持っていることを認める趣旨の発言をします。   4 その後,夫は,アパートで一人暮らしをするようになり,それ以降,長男と会うこともないまま,別居生活を続けているという状況です。   夫は,別居後,妻に対し,毎月,給与(手取り額約30万円)の中から生活費として8万円を送金し,かつ,妻が居住する上記宿舎の家賃や光熱費等を負担しています。   妻は,夫と一緒に暮らしたいとは思っていないが,子宮内膜症にり患しており,就職して収入を得ることが困難であり,将来に経済的な不安があることや子供のためにも,離婚はしたくないと考えているとい うことです。 【コメント】  本件で、一審は夫からの離婚請求を棄却しましたが、高裁は、婚姻関係破綻の主たる責任は夫にあるとしつつ、妻は,かなり極端な清潔好きの傾向があり,これを夫に強要するなどした妻の前記の生活態度には問題があったといわざるを得ず,妻にも婚姻関係破たんについて一端の責任があるなどとして、夫からの離婚請求を認めました。  しかし、次のように述べて、最高裁は夫からの離婚請求認めませんでした。    「民法770条1項5号所定の事由による離婚請求がその事由につき専ら又は主として責任のある一方の当事者(以下「有責配偶者」という。)からされた場合において,当該請求が信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断するに当たっては,有責配偶者の責任の態様・程度,父親配偶者の婚姻継続についての意思及び請求者に対する感情,離婚を認めた場合における父親配偶者の精神的・経済的状態,夫婦間の子,殊に未成熟の子の監護・教育・福祉の状況,別居後に形成された生活関係等が考慮されなければならず,更には,時の経過とともに,これらの諸事情がそれ自体あるいは相互に影響し合って変容し,また,これらの諸事情の持つ社会的意味ないしは社会的評価も変化することを免れないから,時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮されなければならないものというべきである。  そうだとすると,有責配偶者からされた離婚請求については,<1>夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んでいるか否か,<2>その間に未成熟の子が存在するか否か,<3>父親配偶者が離婚により精神的・経済的に極めて苛酷な状況に置かれる等離婚請求を認容することが著しく社会正義に反するといえるような事情が存するか否か等の諸点を総合的に考慮して,当該請求が信義誠実の原則に反するといえないときには,当該請求を認容することができると解するのが相当である(最高裁昭和61年(オ)第260号同62年9月2日大法廷判決・民集41巻6号1423頁参照)。  上記の見地に立って本件をみるに,前記の事実関係によれば,<1>妻と夫との婚姻については民法770条1項5号所定の事由があり,夫は有責配偶者であること,<2>妻と夫との別居期間は,原審の口頭弁論終結時(平成15年10月1日)に至るまで約2年4か月であり,双方の年齢や同居期間(約6年7か月)との対比において相当の長期間に及んでいるとはいえないこと,<3>妻と夫との間には,その監護,教育及び福祉の面での配慮を要する7歳(原審の口頭弁論終結時)の長男(未成熟の子)が存在すること,<4>妻は,子宮内膜症にり患しているため就職して収入を得ることが困難であり,離婚により精神的・経済的に苛酷な状況に置かれることが想定されること等が明らかである。  以上の諸点を総合的に考慮すると,夫の本件離婚請求は,信義誠実の原則に反するものといわざるを得ず,これを棄却すべきものである。 」 【掲載誌】  家庭裁判月報57巻5号40頁        最高裁判所裁判集民事215号657頁        裁判所時報1376号506頁        判例タイムズ1169号165頁        判例時報1881号90頁
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