離婚に伴う子どもの問題

【裁判例】 子の引渡し等を命じたアメリカ合衆国テキサス州地裁判決がわが国の公序良俗に反するとして執行判決請求が棄却された事例 東京高等裁判所 平成5年11月15日
1 外国裁判所の判決等は,当然に我が国での効力が認められるわけではなく,民事訴訟法118条に規定された要件をすべてクリアーした場合に,その効力が認められます。 2 本件は,母親が日本人,地親がアメリカ人という夫婦間での国際間での子の奪い合いのケースです。   当該夫婦は,アメリカテキサス州の法令に従い婚姻して同州に居住し,長女をもうけましたたが,テキサス州裁判所の離婚判決によって離婚しました。   そして,テキサス州裁判所は,本件離婚判決において,母親を長女の単独支配保護者(ソール・マネージング・コンサーバタ−)すなわち保護親(カストディアル・ペアレント)とし,父親を夏休み等の一定期間中だけ長女をその保護下に置くことができる一時占有保護者(ポゼッソリー・コンサーバタ−)と定めました。そして,裁判所の許可なくして州外へ長女を移動させることを禁じました。   しかし,母親は,その後,裁判所の制限付きの許可を得て,長女を連れてテキサス州から日本に転居し,そのままアメリカに戻りませんでした。   そこで,テキサス州裁判所は,長女の単独支配保護者を母親から父親に,一時占有保護者を父親から母親にそれぞれ変更するとともに,母親に対し長女を父親に引き渡すことなどを命ずる判決を言い渡しました。 3 アメリカ人の父親が,テキサス州裁判所の判決を根拠に,日本の裁判所に強制執行により長女の引渡しを求めたのが本件です。   裁判所は,テキサス州裁判所の判決が,長女が日本で生活するようになった場合の日本における少数者に対する偏見・差別,激しい受験競争等の事情から,アメリカにおいて生活するよりも適応が困難になるなどの事情から,長女の父親への引渡など命じたが,長女が日本に居住してから既に4年余を経過しており,小学5年生の現在において,言語の障害もかなり少なくなり,明るく通学しており,かえって,現在では英語の会話や読み書きができない状態にあること,いま再びアメリカで生活させることは,言葉の通じないアメリカにおいて生活することを強いることになることが明らかであるとし,長女をアメリカの父親に引き渡すことは長女の福祉にとって有害であることが明らであるから,テキサス州判決を承認し,これを執行することは,公序良俗に反するとしました。 4 ハーグ条約が締結された場合には,このような事案では,子が連れ去られる前の常居所地であったハーグ条約締結国であるアメリカの法令において,父親の監護権を侵害するものであることから,原則として,アメリカへの父親への引渡が認められるということになります。 【掲載誌】 高等裁判所民事判例集46巻3号98頁        家庭裁判月報46巻6号47頁        判例タイムズ835号132頁
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