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遺言に「相続させる」と書くのと「遺贈する」と書くのとでは効果が違うと聞きましたが,具体的にはどういうことですか?
1 特定の遺産を,特定の相続人に対し相続させたいという場合に,遺言に「相続させる」と記載するのと「遺贈する」と記載するのとでは,次のような違いがあります。 (1)単独で登記手続することができるか 特定の遺産が不動産である場合に,遺言に「相続させる」と記載があれば,その受益者である相続人が,単独で登記手続を行うことができます(不動産登記法63条2項 昭和47年4月17日法務省民事局長通達)。 これに対し,「遺贈する」と記載した場合には,他の共同相続人と共同して登記手続をしなければなりません。 (2)農地法3条所定の許可の要否 特定の相続人に対し特定の農地を相続させたいという場合に,遺言に「遺贈する」と記載した場合は農地法3条に定目られた農地委員会又は知事の許可が必要になりますが,「相続させる」と記載した場合には,許可が不要とされています(農地法3条1項12号)。 (3) 賃貸人の承諾の要否 遺産が特定の借地権又は賃借権である場合,遺言に「遺贈する」と記載した場合は賃貸人の承諾が必要となるのに対し(借地借家法19条,民法612条1項),「相続させる」と記載した場合には賃貸人の承諾が不要になります。 (4) なお,登録免許税についても違いがありましたが,法改正により,平成15年4月1日からは同率になりましたので,現在では違いがなくなっています。 2 上記のような考え方については,登記実務などによって認められていたところでしたが,最高裁判所平成3年4月19日(民集45巻4号477頁)のいわゆる「香川判決」と呼ばれる判決によって,裁判所もそのような取り扱いを認めることになりました。 なお,特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」遺言がされた場合は,当該遺産は被相続人の死亡と同時に当該相続人に承継されることになるので,その遺産についての遺産分割協議をすることはできず,裁判所に審判が申し立てられたとしても裁判所は審判することはできないということになります。 3 「すべての遺産」を特定の相続人に「相続させる」という遺言がされた場合はどうでしょうか? この場合も,特定の遺産が特定の相続人に対し「相続させる」遺言がされたのと同様の取り扱いをすべきものと考えられています。 4 では,「すべての遺産の内2/3」を特定の相続人に「相続させる」遺言がされた場合はどのように考えるべきでしょうか? この場合は,平成3年の香川判決の射程範囲外として,遺産分割協議によって遺産分割すべきであるものと考えられています。
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