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自筆証書遺言に関するQA
高齢のため手が震えるなどの事情があり、他人に手を添えてもらって作った自筆証書遺言は有効ですか?
「自書」というのは遺言者が自分自身の手で書くということです。 他人が添えてをした場合に「自書」と言えるのかどうかについては、有名な最高裁判所の判例があります。 事案は、老人性白内障や脳動脈硬化症の後遺症により手が震えて単独では満足な文字が書けなかった78歳の遺言者の背後から妻が、遺言者の手の甲を上から握り、遺言者が一語一語発声しながら、2人で遺言を記載したというものです。 最高裁判所は、「自筆証書遺言の本質的要件ともいうべき「自書」の要件については厳格な解釈を必要とする」として、「(1)遺言者が証書作成時に自書能力を有し、(2)他人の添え手が、単に始筆若しくは改行にあたり若しくは字の間配りや行間を整えるため遺言者の手を用紙の正しい位置に導くにとどまるか、又は遺言者の手の動きが遺言者の望みにまかされており、遺言者は添え手をした他人から単に筆記を容易にするための支えを借りただけであり、かつ、(3)添え手が右のような態様のものにとどまること、すなわち添え手をした他人の意思が介入した形跡のないことが、筆跡のうえで判定できる場合には、「自書」の要件を充たすものとして、有効であると解するのが相当である」と判示し、この事案では、「本件遺言書には、書き直した字、歪んだ字等が一部にみられるが、一部には草書風の達筆な字もみられ、便箋四枚に概ね整つた字で本文が二二行にわたつて整然と書かれており」、前記(2)の要件を満たしていないとして、遺言を無効と判断した二審の判断を是認しています(最高裁判所昭和62年10月8日)。 要するに、文字がきれいに書かれていて、遺言者が自分の意思で筆を動かしていないと判定されたということだと考えます。 一方、この最高裁判所判決後に下され、他人の添え手による自筆証書遺言が有効とされた裁判例もあります。事案は、手が震えて筆記が困難であった遺言者の右手首の下に自分の手のひらを上に向けて支えてやり、遺言視野の筆記する位置に導いて、遺言者が「ゆいごん わしのいさんそうぞくの指定としっこうをYべんごしにいたくする 昭和55年12月13日 遺言者氏名」と記載された遺言について、他人の意思が介入していないとして有効とされています(東京高等裁判所平成5年9月14日)。 しかし、他人の添え手による遺言の有効性については厳しく見られると思いますので、自分の力で文字が書けないという場合には、無効とされるリスクを考えて、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言や死亡時危急遺言などにして、公証人などにより筆記してもらうべきです。
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