※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。

※内容は、不定期・随時に更新しています。


日野都美子さんの交通事故相談2

みなと損害保険の山名氏と電話で話しをしてからよく考え,その後も何度か山名氏と電話で話しをしましたが,満足のゆく回答は得られず,都美子さんとしては,やはり納得がゆきませんでした。 そこで,知人から紹介してもらった半蔵弁護士のもとに相談に訪れたのでした。
半蔵弁護士

「このたびは大変でしたね。それで,お体のほうは如何ですか?」

都美子さん

「ええ、事故以来,何となくまだ調子が良くないのですけれども・・・体調というより,精神的に少し疲れてしまって」

 都美子さんは,事故自体の衝撃に加えて,保険会社とのやり取りに疲れてしまってふさぎ込んでしまうことがあるということでした。
都美子さん

「保険会社の言っていることが正しいのかどうか,私も書店で交通事故の本を見つけて読んだりしたのですけれど,なかなか難しくてよく分かりませんでした。」

半蔵弁護士

「そうですね。交通事故の案件というのは古くからある分野ですが,なかなか理解できないことも多いですし,新しい論点も出たりして,弁護士でも生半可の知識では保険会社に太刀打ちできないのですよ。」

 半蔵弁護士は,事故の概要を聞いた後,都美子さんは保険会社からの損害賠償金額の提示に不満があると聞いていたので,半蔵弁護士は,一つ一つ尋ねてゆくことにしました。
半蔵弁護士

「治療費の25万円というのは,間違いがないでしょうか?」

都美子さん

「はい,治療費については,保険会社が病院に直接支払ってくれていますので,特に問題はありません。」

半蔵弁護士

「休業損害についてですが,日野さんは事故当時は専業主婦ということでしたね?」

都美子さん

「はい,そうです。」

半蔵弁護士

「パートなどにも出てはいなかったのですね?」

都美子さん

「はい。」

半蔵弁護士

「みなと損害保険は,休業損害の算定の基礎となる日額を5700円としていますが,これは自賠責保険の支払基準なので,保険開始屋に対して損害賠償請求する際は,別の基準を使います。」

都美子さん

「と言いますと?みなと損害保険からは,その金額(5700円)で決まっているからというような言い方をされたのですが。」

半蔵弁護士

「家事をしている専業主婦の場合は,厚生労働省が出している賃金センサスという全国平均賃金の統計を使うのですが,日野さんの場合,日額としては約9500円になります。

都美子さん

「まあ!3800円も違うなんて,,,なんてことでしょう。」

半蔵弁護士

「それと,みなと損害保険では,休業損害の期間をギプスが外れるまでの30日間しか認めていませんが,ギプスが外れてすぐに家事ができるようになったのですか?」

都美子さん

「いいえ,とんでもない。今だって,まだ右肩がうずくような感じがして,洗濯物を上げ下ろししたりするときはつらいんです。」

半蔵弁護士

「なるほど,そうすると,休業損害を請求する期間ももって長く認められるべきですね。」

都美子さん

「いつまで認められることになるのですか?」

半蔵弁護士

「休業損害というのは,基本的には治癒するまでの期間働けなかったことについての損害ですから,治癒した日までということになります。今回の場合でしたら平成22年9月25日が治療終了日ということになっていますので,その日を治癒と考えれば事故日である平成21年3月1日から平成22年9月25日までということになるでしょうね。」

都美子さん

「まあ!1年以上も短い期間を提示してくるなんて,なんてことでしょう!」

ただ,休業損害については,事故日から治癒日までの全期間が100パーセントの割合で休業したと認められる場合根あれば,家事労働のように一定の範囲の家事はできるようになっていくということもあるので,出来るようになった労務の割合に応じて休業損害を決めてゆく必要があるということも,半蔵弁護士は付け加えました。
都美子さん

「入通院慰謝料が120万円というのはどうなのでしょうか?」

半蔵弁護士

「そうですね,入通院慰謝料というのは,実は,算定する基準となる表がありましたね・・・」

半蔵弁護士は,都美子さんに,赤い色をした本を開いて表が書いてあるページを示しました。
半蔵弁護士

「これは,弁護士会が出している「赤い本」と呼ばれているものなのですが,私たち弁護士が保険会社と交渉するときは必ずこの本に依拠して交渉したり請求したりします。裁判保険会社になった場合,裁判所だってこの本に依拠することが多いのです。保険会社もこのことは知っているのですが,弁護士が入らない限り,この本に従って賠償金額を提示することはなく,低い金額で提示するのです」

都美子さん

「まあ!なんでことでしょう。」

半蔵弁護士

「保険会社は,日野さんが実際に通院した日数のみをもとにしていますが,日野さんは実際に230日,1週間に換算して2~3日は通院されているのですから,通院実日数ではなく通院期間で算定すべきだと思います。そうすると,入院1か月,通院19か月ということになるので,この表で見る限り,約180万円ということになるのではないかと思います。」


日野都美子さんの交通事故相談 その1 日野都美子さんの交通事故相談 その3