※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。
※内容は、不定期・随時に更新しています。
「このたびは大変でしたね。それで,お体のほうは如何ですか?」
「ええ、事故以来,何となくまだ調子が良くないのですけれども・・・体調というより,精神的に少し疲れてしまって」
「保険会社の言っていることが正しいのかどうか,私も書店で交通事故の本を見つけて読んだりしたのですけれど,なかなか難しくてよく分かりませんでした。」
「そうですね。交通事故の案件というのは古くからある分野ですが,なかなか理解できないことも多いですし,新しい論点も出たりして,弁護士でも生半可の知識では保険会社に太刀打ちできないのですよ。」
「治療費の25万円というのは,間違いがないでしょうか?」
「はい,治療費については,保険会社が病院に直接支払ってくれていますので,特に問題はありません。」
「休業損害についてですが,日野さんは事故当時は専業主婦ということでしたね?」
「はい,そうです。」
「パートなどにも出てはいなかったのですね?」
「はい。」
「みなと損害保険は,休業損害の算定の基礎となる日額を5700円としていますが,これは自賠責保険の支払基準なので,保険開始屋に対して損害賠償請求する際は,別の基準を使います。」
「と言いますと?みなと損害保険からは,その金額(5700円)で決まっているからというような言い方をされたのですが。」
「家事をしている専業主婦の場合は,厚生労働省が出している賃金センサスという全国平均賃金の統計を使うのですが,日野さんの場合,日額としては約9500円になります。
「まあ!3800円も違うなんて,,,なんてことでしょう。」
「それと,みなと損害保険では,休業損害の期間をギプスが外れるまでの30日間しか認めていませんが,ギプスが外れてすぐに家事ができるようになったのですか?」
「いいえ,とんでもない。今だって,まだ右肩がうずくような感じがして,洗濯物を上げ下ろししたりするときはつらいんです。」
「なるほど,そうすると,休業損害を請求する期間ももって長く認められるべきですね。」
「いつまで認められることになるのですか?」
「休業損害というのは,基本的には治癒するまでの期間働けなかったことについての損害ですから,治癒した日までということになります。今回の場合でしたら平成22年9月25日が治療終了日ということになっていますので,その日を治癒と考えれば事故日である平成21年3月1日から平成22年9月25日までということになるでしょうね。」
「まあ!1年以上も短い期間を提示してくるなんて,なんてことでしょう!」
「入通院慰謝料が120万円というのはどうなのでしょうか?」
「そうですね,入通院慰謝料というのは,実は,算定する基準となる表がありましたね・・・」
「これは,弁護士会が出している「赤い本」と呼ばれているものなのですが,私たち弁護士が保険会社と交渉するときは必ずこの本に依拠して交渉したり請求したりします。裁判保険会社になった場合,裁判所だってこの本に依拠することが多いのです。保険会社もこのことは知っているのですが,弁護士が入らない限り,この本に従って賠償金額を提示することはなく,低い金額で提示するのです」
「まあ!なんでことでしょう。」
「保険会社は,日野さんが実際に通院した日数のみをもとにしていますが,日野さんは実際に230日,1週間に換算して2~3日は通院されているのですから,通院実日数ではなく通院期間で算定すべきだと思います。そうすると,入院1か月,通院19か月ということになるので,この表で見る限り,約180万円ということになるのではないかと思います。」