※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。
※内容は、不定期・随時に更新しています。
「次に逸失利益ですが・・・」
「みとな損害保険の『損害計算書』には,喪失率5パーセント・平均賃金センサス・金額45万円とだけしか記載がなくて,これでは根拠がよく分からないのですが」
「14級9号の後遺症での労働能力喪失率が5パーセントとされているので,みなと損害保険がこの率を用いたこと自体はあながち不当ではありません。そして,逸失利益の場合も,休業損害と同じく,主婦の場合には賃金センサスを用いて収入の基礎とすることにしています。」
「そうすると,逸失利益に関してはこの金額(45万円)であきらめざるを得ないのでしょうか?」
「いえ,問題は逸失利益を計算する期間だと思います。この損害計算書の前提だと,おそらく,みなと損害保険は,逸失利益が生じる期間を3年間くらいとしているようです。」
「よく分かりました。後遺症慰謝料というのはどのようなものなのですか?」
「後遺症が生じたことによる慰謝料です。入通院慰謝料は,入院したり通院したりしたことに対する苦痛を慰謝するためのものですが,後遺症慰謝料は,後遺症が生じたことを慰謝するためのものということで区別されています。」
「40万円というみなと損害保険の提案は正しいのでしょうか?」
「これについても,先ほどの赤い本の基準では,後遺症の等級が14級の場合は110万円となっていますのでこの金額を請求すべきだと思います。」
「はい。」
「みなと損害保険からは,私にも落ち度があったということでその分として40パーセントを損害額から差し引くと言われています。」
「事故の状況はどのようなものだったのですか?」
「交差点に差し掛かる際には相手の自動車が来ていることは分かったのですか?」
「はい,でも,自動車の方が停まってくれるかなと思ったものですから・・・」
「自転車の速度は緩めながら交差点に入ったのですか?」
「はい,ブレーキは掛けながら入ったんですけど,あっと思ったらもう自動車がすぐ近くに来ていて・・・」
「半蔵弁護士さんのお話を聞いていると,みなと損害保険は,あらゆる点で損害賠償額を低くしてきているようですね。許せません。」
「そうですね,正当な損害賠償金額を得られるようしっかり交渉しなければなりません。」
「今後,どのようにすればよいのでしょうか?」
「色々な方法がありますが,今日の相談結果を受けてご自分で再度交渉してみるという方法が一番コストもかかりません。自分で交渉するのは難しいという場合には,弁護士を代理人として任意の交渉をするというやり方もあります。また,任意の交渉でもまとまらない場合には,交通事故紛争処理センター(紛セ)や日弁連の交通事故相談センターに斡旋の申立てをしたりすることもできます。また,最終的には,訴訟という形で裁判所の判断を求めることもできます。」
「交通事故紛争処理センターというのはなんですか?」
「民間の財団法人ですが,公正中立的な立場から,交通事故に関する争いについて和解のあっせんやあっせん案を示してくれます。ほとんどの保険会社は,紛セの提示した斡旋案に従う義務があります。被害者側は斡旋案に従う義務はありませんが,中立的な立場からの一定の結論ですので,斡旋案を蹴って,さらに裁判で争うべきかどうかは検討が必要でしょうね。」
「そうですか,手続のことはお任せしたいと思うのですが,私,保険会社の人と話をするのはちょっと気が滅入るので,半蔵弁護士さんにお願いしたいと思います。」
「分かりました。」