債務整理
※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。
※内容は、不定期・随時に更新しています。
島津義郎さんの個人再生 その3
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その後、資料を取りそろえて、半蔵弁護士は裁判所に島津義郎さんの小規模個人再生手続の申立を行いました。
半蔵弁護士が申し立てた東京地裁では、申立の際には書類のみを提出するだけで足りますが、必ず、個人再生委員という別の弁護士が選任され、その個人再生委員からのチェックを受けることになっています。
半蔵弁護士が申し立てた後、裁判所から連絡が入り、個人再生委員が伊東大佑弁護士に決まったということでした。
なるべく早く、島津義郎さんと共に伊東弁護士との面談をしなければなりません。
半蔵弁護士は、島津さんと伊東弁護士と連絡して日時を調整して、伊東弁護士の事務所に行く日時を決めました。
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当日、半蔵弁護士は、島津義郎さんと伊東弁護士の事務所の前で待ち合わせ、伊東弁護士の事務所を訪ねました。半蔵弁護士たちは会議室に通されました。伊東弁護士を待つ間、伊東弁護士の秘書が出してくれたお茶をすすりながら二人で少し話をします。
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義郎さん
「今日は、どんなことを聞かれるのでしょうか?」
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半蔵弁護士
「はい 先ほどもご説明したとおり、基本的には私に説明して下さったことをそのまま伊東弁護士にお話し下されば大丈夫です。書類は私からすでに伊東弁護士に提出してあります。」
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義郎さん
「分かりました。」
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時間になり、伊東弁護士が来たようです。
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伊東弁護士
「やあ今日はわざわざお越し頂き有難うございます。私が、今回、島津さんの件の個人再生委員となった弁護士の伊東です。」
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義郎さん
「このたびは宜しくお願い致します。」
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伊東弁護士
「個人再生委員の役割というのは、すでに半蔵弁護士からもお聞きになっていると思うのですが。」
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義郎さん
「はい おおよそは。」
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「念のため」ということで伊東弁護士が改めて個人再生委員の役割を説明します。個人再生委員の役割は、裁判所を補助して申立人である島津さんから提出された書類などのチェックをすること、そして、裁判所に対して意見を述べることにあります。
個人再生委員が裁判所に意見を述べる機会としては基本的に3つあり、@個人再生手続を開始するかどうかA再生計画案を債権者に諮るかどうかB最終的に再生計画案を認可すべきかどうかという3つの場面です。
このようなことを伊東弁護士から島津さんに対して改めて説明がされました。
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伊東弁護士
「さて、それで今日は主に個人再生手続を開始してもよいかどうかという点について、提出された書類に沿ってお聞きしていくことになるのですが、まず、債権者についての確認ですが・・・」
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伊東弁護士は、債権者の顔触れや内容を確認してゆきましたが、おおむね、相談段階で半蔵弁護士が義郎さんに確認したところでした。
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伊東弁護士
「住宅ローン以外の一般再生債権は、利息制限法の引き直し計算はされていますね?」
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半蔵弁護士
「はい 」
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伊東弁護士
「住宅資金貸付債権(住宅ローン)については、一部弁済許可の申立はされていますね?」
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住宅ローンについては、他の債権と異なり,弁済しなければ抵当権を実行されてしまいますので,他の債権とは特別に扱い弁済を継続してもよいという裁判所からの許可を得なければなりません。これを,一部弁済の許可といいます。
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半蔵弁護士
「はい,申立と同時に申請してあります。」
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それから,伊東弁護士は,義郎さんの保有する資産について尋ねましたが,特に問題になるところはなかったようです。なお,半蔵弁護士がマンションの時価査定を取ったところ,高めに見積もってもおおよそ2500万円ということで,オーバーローンになっていました。
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伊東弁護士
「収支についてですが,奥さんのパート収入も併せての再生計画ということを考えていらっしゃるのですね?」
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半蔵弁護士
「はい,義郎さんの収入だけでもいけるかとは思うのですが,奥さんの収入も合わせることでより安定的に弁済原資が確保できると考えています。」
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伊東弁護士
「現在の計画ですと,住宅ローンを除いた月の支払額は約2万8000円ですね。」
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住宅ローン以外の一般債権については最低弁済基準というものが定められていますが,義郎さんのケースでは,残債務400万円の内約300万円は債権カットし,約100万円が最低弁済額となる見込みで舌。この100万円を3年間(36か月)で返済するとすると,月額2万8000円になります。
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半蔵弁護士
「はい,義郎さんの収入だけでもいけるかとは思うのですが,奥さんの収入も合わせることでより安定的に弁済原資が確保できると考えています。」
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伊東弁護士
「分かりました。その点は,支払いテストも見ながら判断することとしましょう。」
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支払いテストというのは東京地裁で行われている方式で,個人再生手続が終わるまでのおおよそ6か月間の間,月1回,予定している弁済額(義郎さんの場合で言えば月額約2万8000円)を,個人再生委員の口座に支うことで,支払能力をチェックしようというものです。
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伊東弁護士
「では,第一回目の支払についてはいつ頃支払って頂けそうですか?」
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義郎さん
「それは半蔵弁護士さんからの指示でもう準備してありますので,すぐにでもお支払できます。」
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伊東弁護士
「分かりました。それでは,なるべく早く入金して頂きご連絡ください。確認した上で,裁判所に対して開始相当の意見を出しておきましょう。今後は,月1回,2万8000円を忘れずに支払うようにしてください。」
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義郎さん
「分かりました。」
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伊東弁護士
「支払いテストの支払がされないようですと,支払い能力に疑義があるということで手続きが廃止になってしまいますので,気を付けてください。」
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義郎さん
「分かりました。」
島津義郎さんの個人再生 その1
島津義郎さんの個人再生 その2
島津義郎さんの個人再生 その4