※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。

※内容は、不定期・随時に更新しています。


藤原道夫さんの成年後見相談 3

藤原道夫さんから書類を受け取ってから、半蔵弁護士は、道夫さんの弟の兼夫さん、妹の光子さんとも電話で話しをして、後見の申立ての件について説明し、改めて了解を得ました。 そして、数日後、道夫さんと一緒に都内の藤原ミチさんの自宅を訪ねることとしました。呼び鈴を押すと、先に来ていた道夫さんが出てきました。
道夫さん

「今日はどうもわざわざお越し頂いて有り難うございます。母も奥で待っております。」

半蔵弁護士

「お忙しいところお時間を作って頂いて有り難うございます。お母さんの調子は如何でしょうか?」

道夫さん

「はい、普段と変わりなく元気です。ただ、弁護士さんが来られるということで説明したところ、少し緊張しているようです。」

半蔵弁護士が奥のリビングに通されると、藤原ミチさんが椅子に腰かけていました。小柄なおばあさんといった感じです。
道夫さん

「おーい、お母さん、弁護士さんが来てくれたよ。」

半蔵弁護士

「初めまして。私は半蔵弁護士と申します。」

ミチさん

「あらあら、・・・わざわざこんなところまで来て頂いて。すみませんねー。道夫、こちらの方にお茶を出して差し上げて。」

道夫さん

「うん、いま準備するよ。半蔵弁護士さん、ちょっと待っていてください」

道夫さんがキッチンの方に向かいます。
半蔵弁護士

「道夫さん、どうぞお気遣いなく。」

ミチさん

「ええっと、それで今日はどんなご用件だったかしら?」

キッチンの方に向かいかけた道夫さんが足を止めました。
道夫さん

「お母さん、さっきから説明しているじゃないか。今日は、弁護士さんに来てもらって、お母さんの今後のことについて色々と説明をお聞きするということだっただろう。」

ミチさん

「ああ、そうそう。そうだったわね。最近ちょっと物忘れが有りましてね。すみませんね。」

半蔵弁護士

「いいえ、とんでもないですよ。私も、最近は物忘れが多いですから。」

ミチさん

「そうよねー、まったく年を取るのは嫌なもんだわ。それで、あなた様は銀行の方だったかしら?」

半蔵弁護士と道夫さんは顔を見合わせました。
道夫さん

「お母さん、こちらの半蔵弁護士さんは弁護士さんだよ。」

ミチさん

「そうそう、ごめんなさい。」

半蔵弁護士

「いいえ、いいんですよ。今日は、道夫さんや弟の兼夫さん、妹の光子さんなどから、『最近、ちょっとお母さんの物忘れが酷くなってきているので少し心配している』ということで、ちょっと伺ってみたんですよ」

ミチさん

「まあまあ、それは済みませんね。」

半蔵弁護士と道夫さんは顔を見合わせました。その後、半蔵弁護士は、ミチさんに昔のことから最近のことまでいろいろと尋ねましたが、特に最近の短期記憶の低下が著しいようです。成年後見制度のことも説明しましたが、どこまで理解できているかとなると、曖昧な感じでした、半蔵弁護士は、家庭裁判所が出している後見制度のパンフレットなどの資料をミチさんに手渡しました。
半蔵弁護士

「これは、裁判所で出している後見制度について書かれたパンフレットです。先ほどご説明したことは大体書かれているのですが。」

ミチさん

「まあまあ、それは済みませんね。でも、私は、最近はこういうのを読むのも面倒になってしまいましてね。」

半蔵弁護士

「よく分からないことがあったら、私の名刺に書いてある電話番号にいつでもかけて下さい。」

ミチさんは黙って微笑みましたが、あまりパンフレットのことを質問したりする気はないようです。
半蔵弁護士と道夫さんは、1時間ほどでミチさんの自宅を退出し、一緒に半蔵弁護士の事務所に戻りました。 半蔵弁護士は、道夫さんとも確認した上で、予定通り東京家庭裁判所に後見の申立てを行うこととしました。 そして、その場で、半蔵弁護士は東京家裁の後見センターに面接予約の電話連絡を入れることとしました。ミチさんの成年後見の申立を管轄することになる東京家庭裁判所では後見センターという専門の部署があり、申立の際には、電話で日時の予約を取ることになっているのです。
後見センター

「はい、こちらは東京家庭裁判所の後見センター予約係です。」

半蔵弁護士

「はい、こちらは半蔵弁護士と申しますが、後見の申立ての予を取りたいのですが。」

後見センター

「分かりました。確認させて頂きたいのですが、ご本人さんの住所は23区内ですね?」

半蔵弁護士

「はい。」

東京の場合の管轄は、23区内に本人の住所がある場合は霞が関の本庁、23区階外の市部の場合には立川支部ということになっているので、最初に必ず確認されます。
後見センター

「分かりました。所定の診断書は取得していますか?」

半蔵弁護士

「はい。」

後見センター

「診断書の後見類型はどのようになっていますか?」

半蔵弁護士

「はい、一番重い後見相当になっています」

後見センター

「分かりました。当日来られるのはどなたになりますか?」

半蔵弁護士

「はい、半蔵弁護士と申立人の藤原道夫さんの2人になります。本人のミチさんは、裁判所まで来られないと思います」

後見センター

「分かりました。それでは、お越しになられる日なのですが・・・・」

裁判所と半蔵弁護士、道夫さんの3者の都合を調整して、裁判所に申立てに行くに日時は1週間後の午前10時に決まりました。
半蔵弁護士

「それでは、1週間後の午前10時に霞が関の東京家裁で待ち合わせましょう。宜しくお願いします。それまでに、今日お聞きしたことなどをもとにして、私の方で書類を作って準備しておきますが、事前に、ファクスで一度お見せしますので確認をして頂けないでしょうか?」

道夫さん

「分かりました。宜しくお願いします。」


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