※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。

※内容は、不定期・随時に更新しています。


里見豊さんの建物明渡し〜その4

結局,足利執行官が定めた期限の直前になっても,北条からは退去したとの連絡もなく,強制執行当日になりました。強制執行当日,半蔵弁護士が,現地に行くと,大きな4トントラックが停まっており,大森さんほかの作業員が数人待機していました。
大森さん(撤去業者)

「おはようございます。結局,退去しなかったようですね。」

半蔵弁護士

「まあ,予想通りですね。時間はどれくらいかかりそうですか?」

大森さん(撤去業者)

「そうですね,分量はそれなりにありますが,まあ1時間半みとけば大丈夫じゃないかと思いますよ。」

強制執行は,引越サービスではないので,丁寧な梱包などはしません。その分,執行官や代理人弁護士の予定もあって,スピード重視ですので,なるべく早く終わるように業者も心得ています。やがて,足利執行官らも現場に到着し,強制執行が開始されることになりました。今日も足利執行官を先頭に北条の部屋に向かいます。
足利執行官

「北条さーん。」

足利執行官が呼びかけながら,呼び鈴を押し,ドアをノックしますが,反応がありません。誰も何度か呼びかけましたが出てきません。
足利執行官

「仕方がありません,鍵を開けてください」

大森さん(撤去業者)

「分かりました」

大森さんが手配した鍵屋が簡単に鍵を開けました。こんなで中に入ります。嫌な想像も脳裏をよぎりましたが,幸い,部屋の中には北条の人影はなく異臭などもしませんでした。
足利執行官

「どこかに行っちゃったのかなあ」

半蔵弁護士

「そうですね,ぎりぎりまで粘るだけ粘って出て行ったということでしょうか。こういうことはよくあるのですか?」

足利執行官

「そうですね,身の回りのものだけ持って執行までにどこか行っちゃうというのはなくはないですよ。もうあがいても無理だということで観念するのでしょう。」

その後,大森さんと作業員が,手際よく作業に取り掛かりました。作業が終わるまで,結局,北条は戻ってきませんでした。作業もあらかた終わると,半蔵弁護士は,執行調書に署名押印しました。
半蔵弁護士

「お疲れ様でした」

大森さん(撤去業者)

「はい,今回はどうも有り難うございました。これが新しく取り替えた鍵です。」

執行が終わると,新しく鍵を取り換えてもらうことになっており,半蔵弁護士は新しい鍵を受け取りました。その後,半蔵弁護士は,里見さんに顛末を報告し,新しい鍵を渡しました。残念ながら,未払賃料については回収することはできませんでしたが,部屋の明渡は完了したということで,これで,すべて終了ということになりました(完)

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