※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。
※内容は、不定期・随時に更新しています。
「どうも,初めまして。このたび,上杉商店と上杉社長個人の破産管財人に選任された弁護士の武田です。」
「宜しくお願いします。」
「宜しくお願いします。」
「既に半蔵弁護士さんからも注意を受けているとは思いますが,今後,私が破産管財人として,上杉商店や上杉社長個人の資産や債務の調査に当たりますので,説明を求められたことについてはきちんと答えるようにお願いします。」
「はい。」
「さて,まず上杉商店の関係ですが,資産の売掛金についてですが,こちらからの請求の根拠となる契約書や注文書などの資料はありますか?」
「はい,それは,私が事務所から引き揚げてきて保管しています。主なものについては,今日コピーをお持ちしました。」
「そうですか,それでは,原本その他については改めて私の事務所に郵送するようお願いします。早速,私から改めて売掛先に対して請求書を送付して,支払については破産管財人の口座に送金してもらうようにしましょう。」
「分かりました。」
「幾分かの在庫があるようですが,これについては申立代理人の半蔵弁護士の方で見積はとられましたか?」
「いえ,今回は申立の準備期間が短く,そこまでは手が回りませんでした。」
「分かりました。上杉社長,決算書によるとその時点での在庫の価値として約200万円ほどの計上になっていますが,在庫の価値としてはどれくらいでしょうか?」
「半蔵弁護士さんにもお話ししたんですが,なかなか分からないところもありますが,50万円くらいではないかとは思うのですが・・・すみません,ちょっとよく分からないところです」
「分かりました。上杉社長の方で在庫を高く買い取ってくれる先を見つけるということは可能でしょうか?」
「そうですね,知り合いの業者に声をかけてみることはできると思います」
「それではお願いします。私の方でも,買取先がないかどうかを探してみることにします。」
「ところで,この在庫が保管してある上杉商店の事務所ですが,ここは賃借物件でしたね?」
「はい,そうです。」
「賃料の支払状況についてはどうなっていますか?」
「翌月前払いですが,今月11月分については未払になっています。」
「保証金はどれくらい入れていたんでしたっけ?」
「300万円ほど入れてあったと思います。」
「そうですか,なるべく保証金の範囲内で,できれば戻ってくるようにしたいので,早めに退去したいと思います。従業員の私物などについては残っていませんか?」
「はい,解雇した際にすべて引き揚げさせました。」
「それと,リース物件も未返還でしたね?」
「はい,そうです。リース物件の一覧表については準備してきました。」
「従業員の関係ですが,全員解雇済みなのですね?」
「はい。」
「離職票についても交付済ですか?」
「はい。」
「それから,上杉社長個人の破産手続の関係に移りたいと思います。債権者一覧表によると,上杉商店の債務の連帯保証債務がほとんどですが,そのほかに,いくつか消費者金融からの債務がありますね?」
「はい,上杉商店の支払で足りないときは個人で借り入れて会社の資金繰りにカネを突っ込んでいました。」
「分かりました。借り入れた期間が長い業者もありますので,過払金の返還についても受けられないか注意する必要がありそうです。」
「それと,上杉社長の自宅のマンションですが,住宅ローンが付いていますね?」
「はい。」
「あのう,質問があるのですが?」
「はい,なんでしょう?」
「破産手続きによってマンションが売却されてしまうということについては半蔵弁護士さんからも説明を受けて理解しています。次の住まいについても,親戚の援助で何とか見付けたいと思いますが,いつ頃までに出て行かなくてはならないものなのでしょうか?」
「そうですね・・・」
「分かりました。言われたらすぐに出られるように前倒しで準備しておきたいと思います。」