※設例は、あくまでも公開された裁判例などをもとにした仮定のものであり、登場人物や事件の内容は、実際の事件とは一切関係ありません。
また、実際の相談が必ずこのように進むというわけでもありません。
相談を初めてしようと思っている方などに対して、あくまでも、弁護士がどんなことを尋ねるのかとなどについてイメージとしてお伝えしているものです。

※内容は、不定期・随時に更新しています。


上杉商店の破産 その5

その後,半蔵弁護士と上杉社長は,何回か,破産管財人である武田弁護士の事務所に赴いたり,上杉商店の本社事務所で打合せをしたりしました。 そして,破産手続の申立から約3か月後,裁判所で債権者集会が開かれ,半蔵弁護士と上杉社長はそろって出席しました。
債権者集会には,取引先など5〜6名の債権者が来ていました。
裁判官

「それでは,上杉商店と上杉社長個人の債権者集会を始めたいと思います。それでは,まず,上杉商店について,破産手続申立から本日までの管財業務について,破産管財人である武田弁護士から説明して頂きたいと思います。」

武田弁護士

「はい。破産管財人に選任された弁護士の武田ですが,上杉商店の管財業務についてご報告したいと思います。お配りした財産目録と収支計算書をご覧ください。」

一同,武田弁護士が配布した財産目録と収支計算書に目を落とします。
武田弁護士

「上杉商店の財産ですが,申立書に記載されていた売掛金についてはすべて回収致しました。回収金額については財産目録「売掛金」欄に記載のとおりです。」

武田弁護士からの説明が続きます。
武田弁護士

「また,上杉商店には本店事務所内に在庫として部品などが残っていました。これについては売り先を探したのですが,既に型式が落ちているなどの問題があって当方が希望した金額には達しませんでした。」

在庫については,上杉社長が50万円くらいかということを言っていましたが,どうもそのような金額には達しなかったようです。
武田弁護士

「そこで,在庫にいては,本店事務所の撤去を依頼した業者に買い取ってもらうこととし,その代わりに撤去費用から在庫代金を差し引くという形として処理をしました。」

在庫については撤去費用を安くしてもらうことで処理したようです。武田弁護士の説明によると,上杉商店についてはその他のめぼしい資産はなかったようです。
武田弁護士

「そして,現在までの収支ですが,申立時からの引継金と回収した売掛金から撤去費用等を差し引きました。なお,家主に差し入れていた保証金の内財産目録記載のとおりの金額が返還されています。しかし,上杉商店には滞納していた税金があり,こちらに優先して支払わなければならないことから,残念ながら,一般債権者の皆様に対する配当はできないという状況です。」

裁判官

「有り難うございます。それでは,債権者の皆さんから何か質問はありませんか?」

債権者

「配当がないということですが,貸倒ということで税務署に提出する書類を頂きたいのですが?」

裁判官

「はい,その点については廃止証明書という証明書を破産管財人から送付を受けて税務署に提出して頂くようお願いいたします。」

そのほか,債権者からいくつか質問がありましたが,武田弁護士が回答し,最後に裁判官が上杉商店の破産手続については終結することを宣言しました。
裁判官

「それでは,続いて,上杉社長個人の債権者集会に移りたいと思います。債権者の中で,上杉商店のみに債権をお持ちの方は御退席をお願いします。」

債権者の全員が退席してしまったため,債権者は誰もいくなってしまいました。
裁判官

「それでは,ご報告をお願いします。」

武田弁護士

「はい。」

武田弁護士の説明によると,上杉社長のマンション任意売却が成功し,代金の中から3パーセントを破産財団に拠出してもらったということでした。そのほか,上杉社長が消費者金融から借り入れていた分については過払いが発生している者があったため,その回収も完了したということでした。
武田弁護士

「ということで,上杉社長個人の分については,税金滞納もなかったため,若干ですが,配当が出来そうです。」

裁判官

「分かりました。それでは,上杉社長個人の破産手続については,簡易配当することとし手続自体は本日で終了することとしたいと思います。」

武田弁護士

「はい。」

裁判官

「次に,免責に関する破産管財人の意見を述べてください。」

武田弁護士

「はい,免責については不許可事由なしと考えます。」

裁判官

「分かりました。」

裁判官は,上杉社長に対し,免責についての裁判所の判断は今後1週間くらい後に半蔵弁護士に伝え,すべての手続が終了したと宣言されました。
その後,半蔵弁護士のもとに上杉社長個人の債務を免責するとの裁判所の決定が送付されました。 上杉社長は,現在,知り合いの業者のところで働かせてもらいながらきちんと生活しているということです(完

上杉商店の破産 その1 上杉商店の破産 その2 上杉商店の破産 その3 上杉商店の破産 その4