離婚原因に関するQA

【裁判例】離婚請求事件について、妻の不貞行為を認定しながら特段の事情を審理判断することなく夫の離婚請求を排斥したのは審理不尽であるとした事例 最高裁判所昭和38年6月4日
【事案の概要】 夫から妻に対する離婚請求の事案です。 夫婦は昭和28年9月婚姻をしましたが,夫は妻と婚姻した後日が経つにつれて飲酒して帰宅が遅れたり,1カ月のうち3,4日は帰宅しないことがあるようになり,次第にその度を増してゆき夫婦の間に口論が絶えず,夫婦仲が冷たくなってゆきました。 昭和31年I,夫婦間に長男が出生した頃から夫の外泊は更に頻繁となり,しかも夫は妻に満足な生活費を支給せず,妻は僅かな手持衣料品を入質したり,近隣から日常の支払に充てるための金借をしたりして糊口をしのぐようになりました。 妻から媒酌人に対して夫がが必要な生活費を支給するよう頼んで貰つたがその効果はなく,妻はその日の生活にも事欠く状況であつたので,将来の生活について相談するため、夫の外泊不在中着のみ着のままで長男を連れて実家に帰りました。 妻は,夫と別れる積りで実家に帰つたわけではなかつたけれども,近隣に不義理をしている関係から夫の許に帰えることができず,さりとて,行商で細々生活している老母の許で無為に過ごすこともできなかつたので,自己と長男の生活を支えるため,飲食店やバー等を転々としました。 ここまでですと,完全に夫の方が悪いのですが,本件で,妻は,収入が少ないために異性と情交関係を持つたり,街頭に立つなどして生活費を補ってしまい昭和34年父親不明の子を分娩してしまいます。 【裁判所の判断】 1 夫からの不貞行為を理由とする離婚請求に対しては,一審,二審は,多くの原因が夫に有るなどとして離婚請求を棄却しました。 2 しかし,最高裁は,妻の不貞行為を認定しながら他に首肯するに足りる特段の事情の存在を審理判断することなく夫からの本訴離婚の請求を排斥しているのは妥当ではないとしました。 3 このようなケースで,離婚を求められている側に不貞行為という民法770条1項1号所定の離婚事由があることは明らかで,民法770条2項の裁量棄却によって離婚請求を棄却することも考えられなくはありませんが,少なくとも不貞行為に関しては裁量棄却ということについて裁判所は極めて慎重であるということができます。 また,離婚について不貞行為を上回るような原因があれば,有責配偶者からの離婚請求として離婚請求が棄却されますが,感覚的には不貞行為の場合にはそれを上回る離婚原因の責任が認定されるということは困難だと思います。 なお,本件では,妻は婚姻関係を継続する意思があったのに不貞行為に及んでいますので,婚姻関係が形骸化した後の不貞行為ということにもなりません。 【掲載誌】  家庭裁判月報15巻9号179頁        最高裁判所裁判集民事66号361頁        判例タイムズ156号104頁
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